両方の呼吸は大事
呼吸は「二択」ではない
呼吸法の話題になると、「胸式呼吸派」か「腹式呼吸派」かというように、あたかも二者択一のように語られることがあります。しかし実際には、人間は無意識のうちに胸式呼吸(胸を中心に膨らませる呼吸)と腹式呼吸(お腹を中心に膨らませる呼吸)の両方を行っています。
呼吸は生命維持のために常に働き続ける機能であり、状況や身体の状態に応じて自然に切り替わっています。

胸式呼吸とは
胸式呼吸は、主に肋間筋(肋骨の間にある筋肉)を使って胸郭を広げ、肺に空気を取り込む方法です。
特徴
胸が上下に動きやすく、肩や鎖骨付近も少し持ち上がる感覚があります。
メリット
呼吸が浅くても素早く酸素を取り込めるため、運動時や緊張状態に有効
胸郭を大きく動かすため、上半身の可動域改善に役立つ
使われやすい場面
- 運動中(ランニング・筋トレなど)
- 緊張やストレス下(交感神経優位な状態)
- 話しているときや歌っているとき

腹式呼吸とは
腹式呼吸は、横隔膜を大きく上下させることでお腹が膨らむ呼吸法です。
特徴
息を吸うとお腹が前後左右に膨らみ、吐くとへこみます。
メリット
副交感神経が優位になりやすく、リラックス効果が高い
横隔膜の動きにより内臓が刺激され、血流や消化機能を促進
下腹部や体幹の安定性向上
使われやすい場面
- 睡眠時
- 瞑想・ヨガ
- 落ち着いて作業しているとき
腹式呼吸は「深くゆったりした呼吸」に適しており、休息や集中の質を高める効果があります

無意識の呼吸は、状況によって胸式にも腹式にも切り替わります。
走っているとき☞胸式呼吸優位(速く酸素を取り込みたい)
寝ているとき☞腹式呼吸優位(体を回復モードに)
会話中☞胸式と腹式が混ざる(発声と酸素供給のバランス)
つまり、「胸式か腹式か」ではなく、どちらも常に行っていて、比率 が変わっているというのが実態
普段は無意識に両方を使っていますが、呼吸法を意識して変えると、目的に応じて身体の状態をコントロールできます。
• 集中力を高めたい・活動モードに入りたい → 胸式呼吸を大きく行う
• 心を落ち着けたい・ストレスを和らげたい → 腹式呼吸をゆっくり行う
• 運動パフォーマンスを上げたい → 両方を組み合わせ、酸素供給量を最大化
ピラティスでは胸式呼吸(特に側方呼吸)を多用します。これは、動きながら体幹を安定させるために腹部を引き締めたままでも、胸郭を広げて酸素を取り込めるからです。一方で、セッション前後のリラックスや回復には腹式呼吸を取り入れることで、副交感神経が優位になり、心身のバランスが整います。

胸式呼吸=胸郭を広げる呼吸(活動・運動・集中)
腹式呼吸=横隔膜を動かす呼吸(休息・リラックス)
実際は両方を無意識に使っており、比率が状況によって変化する
意識して呼吸法を変えることで、自分の身体やメンタルをコントロールできる
呼吸は、単なる酸素の出し入れ以上の力を持っています。胸式も腹式も、目的やシーンに合わせて使い分けることで、日常生活や運動、心身の健康に大きなプラスをもたらします。