養成コースを終え、いざ現場に立ったとき、多くのインストラクターが共通して経験する壁があります。
レッスンは進めたはずなのに、お客様の動きが思った方向に変わらない。課題は見えているのに、その場で「何をすればいいか」が咄嗟に出てこない。学んだ専門用語を使っても、お客様にポカンとされる——。
こうした「現場特有のつまずき」は、ベテランの誰もが通ってきた道です。今回は、新人ピラティスインストラクターが直面しやすい4つの壁と、その根っこにある力、そして養成段階から鍛えていきたい視点を整理します。

新人インストラクターが現場で直面する、4つの壁
養成卒業後のつまずきは、大きく4つの領域に分かれます。それぞれ「何が起きていて、なぜ起きるのか、どう抜けるのか」を見ていきます。
① メニュー設計の壁|課題は見えても、組み立てが追いつかない
- 課題:骨盤が後傾している、肩甲骨が前方に流れている——お客様の身体の課題には気づけても、その場で「何を、どの順番で、どれくらい」を組み立てるのに時間がかかる。レッスン中に頭の中が真っ白になることも。
- なぜ起こるか:「観察」と「介入(エクササイズ選択)」の間にある「分析」のステップが、まだ自分の中で体系化されていない段階。知識として知っていても、現場で瞬時に取り出せる引き出しになっていない。
- 抜け道:まず「自分の得意な型」を3〜5パターン持ち、そこから微調整するスタイルが現実的です。型を持つことは「型にはまる」ことではなく、「分析の足場を持つ」こと。型がないとゼロから組み立てるので、毎回フリーズしてしまいます。
② キューイングの壁|解剖学用語が、伝わらない
- 課題:「腸腰筋を使って」「胸郭を引き上げて」——養成で学んだ言葉をそのまま使うと、お客様は固まる。何をしたらいいか伝わらない。
- なぜ起こるか:専門用語は「指導者の世界の言葉」であって、「お客様の身体感覚の言葉」ではありません。間に「翻訳」のステップが必要になります。
- 抜け道:日常動作への置き換え(「椅子から立ち上がるときに使う筋肉」「肋骨をふわっと持ち上げる感じ」)と、擬音語(ふわっ、すっ、じわっ)を組み合わせる。お客様の「あ、これか」が出た言葉は、レッスンごとにメモしてストックしていくのが近道です。
③ ハンズオンの壁|触れ方と力加減の迷い
- 課題:言葉だけでは伝わらないとき、手で誘導したい。けれど触れる位置や力加減がわからず、頼れない。「強すぎる?」「ここで合ってる?」と迷っているうちにタイミングを逃す。
- なぜ起こるか:ハンズオンは「指導者の意図」を「お客様の感覚」へ橋渡しするスキルで、経験量の問題でもあり、自分の手の感度の問題でもあります。
- 抜け道:自分の手だけに頼らず、プロップス(リング、ボール、タオルなど)を活用する。お客様自身が「ここに圧がある/ここが伸びる」と感覚を取りに行ける道具を間に挟むと、自力での気づきが起こりやすくなります。
④ 顧客コミュニケーションの壁|運動以外の対話
- 課題:身体の悩み、生活習慣、メンタルの揺れ——お客様の話に親身に応えたいが、どこまで踏み込めばいいか、どう答えればいいかわからない。会話の引き出しが足りない、と感じる。
- なぜ起こるか:ピラティス指導は「動きの指導」だけで完結しません。お客様の生活の文脈を理解できると、レッスン設計も変わる。けれど対話の引き出しは座学だけでは育ちにくい部分です。
- 抜け道:レッスン前後の何気ない会話を「観察の時間」として捉える。今日の歩き方、座り方、声のトーン——その日の状態のヒントは必ずどこかに出ています。話を引き出そうとするより、まず観察を増やすほうが、対話の入り口は見つけやすい。

4つの壁の根っこにあるもの
別々に見える4つの壁は、根っこをたどるとほとんど同じ場所に行き着きます。
- 身体の状態を正確に観察する力
- 観察したものを、相手に届く言葉に変える力
メニュー設計の壁も、キューイングの壁も、ハンズオンの壁も、顧客対応の壁も——「観察を分析につなぎ、相手の身体感覚に変換する」という一連のプロセスのどこかで詰まっている、と捉え直せます。
逆に言えば、この2つの力が伸びていけば、4つの壁は同時に下がっていきます。
REBORN PILATESが養成で大切にしていること
REBORN PILATESでは、新人インストラクターが現場で立ち止まらないために、養成段階から次の3つを意識しています。
- 観察を分析につなぐ思考:「この姿勢は何を意味するか」を解剖学・神経・呼吸の視点から読み解く
- 専門用語を日常言語に翻訳する習慣:知識を「伝わる言葉」に変える練習を、養成中から重ねる
- ハンズオンとプロップスを併用する組み立て:手だけに頼らず、道具と言葉を組み合わせて誘導する
「知っている」と「現場で使える」の間には、必ず練習量と試行錯誤が必要です。その距離をできるだけ短くする設計を、私たちは大切にしています。
まとめ
新人ピラティスインストラクターが現場で直面する4つの壁——メニュー設計、キューイング、ハンズオン、顧客対応——は、どれも「観察を分析につなぎ、相手の言葉に変える」プロセスの一部です。
完璧な指導はベテランでもありません。大切なのは、自分が今どこで詰まっているかを見える化し、そこを練習で埋めていく姿勢です。
学びを止めず、現場で試し、また学びに戻る——その往復の中で、壁はゆっくり、けれど確実に低くなっていきます。
「現場で詰まったところを、もう一度学び直したい」「観察と分析の力を、解剖学からきちんと積み上げたい」——そんなインストラクターの方に向けて、REBORN PILATES Educationでは、卒業後にも戻ってこられる学びの場をつくっています。

